余白の時間が生み出したもの② 〜A君とのお散歩での気づき〜
- えがおのたね
- 4月15日
- 読了時間: 3分
更新日:7月6日
行きたい公園に行けず、パニックになったA君。
でも気持ちを切り替えて別の公園に向かうことができました。
BさんはA君の手を取り、歩いて5分ほどの公園へ向かいます。
順調に歩き出すA君。
でも時々、急に後ろに戻ったり横に行ったりします。
「??」と思いつつ、BさんはA君が飛び出さないよう注意して見守りました。
やがてA君がマンホールや白線を踏みながら歩いていることに気が付きました。
そして、自閉症の作家である、東田直樹さんの文章を思い出しました。
〇目で見て確認する作業は、他の人には意味のない行動かもしれませんが、僕にとっては、楽しみでもあります。
〇前にあったものが今日もある。
それは今日も僕が同じ場所で生きていく心のよりどころになっています。
よく行く公園。その途中にあるマンホールや白線。
それらをA君も心のよりどころにしているのかもしれません。
公園に着くころには、いつもの優しい穏やかなA君に戻っていました。
そして、笑顔で滑り台を楽しみ始めました。
Bさんは携帯のタイマーを見せ、
「『ピピピ』が鳴ったら時間だから帰ろうね。」
と、伝えました。
滑り台の後は公園をお散歩。
ピンクの椿の花が落ちているのをみつけたA君。
一つ拾うと、大事そうに手に取りました。
柱の上に帽子のようにそっとかぶせてみる。
排水桝の四角い穴にさしてみる。
公園を歩きながら、ところどころにその椿を置いて楽しんでいるA君。
タイマーがなりました。
まだ公園で遊びたい様子のA君でしたが、
「きなこでおやつ食べようね。」
と伝えると、Bさんに椿を渡してゆっくり歩きだしました。
公園の出口まで来ると、
「電車!」
というA君。
電車が見えるルートで帰ることにしました。
イヤーマフを取り、Bさんに渡すA君。春風に揺れるA君の髪。
Bさんは、お散歩が好きなA君の気持ちが改めてわかったような気がしました。
帰りもマンホールを踏んでいくA君。
目の前には大きな大きな夕日。
「夕日だね。大きいね。」
とBさんが言うと、A君が後ろを振り返りました。
長く長〜く伸びる2人の影。
A君は、腕で大きく丸をつくりました。
影も同じ形になります。

「自分の影を見るなんて、いつ以来だろう?と思って。
なんだかとても懐かしい気持ちになったんですよね。
子ども時代、『影』は身近な存在だったのに…。」
Bさんはその時を思い出しながら言いました。
そのあとの道を、Bさんも一緒にマンホールを踏みながら帰りました。
歩くスピードも徐々に速くなります。
「マンホールを見つけると、遠くから指さして走って行って。
『マンホール!!』って言いながら一緒に踏んで。なんか、私も楽しくなってきちゃって。」
笑顔で語るBさん。
そしてBさんは、
「決まったプログラムがなく余白の時間が多いきなこだからこそ、このような時間が持てた。
そして、今まで以上にA君の思いを感じることができた。」
と、改めて気付いたそうです。
一人一人の子が様々な思いや願いを持っている。
全てを叶えることは難しいけれど、できるだけその思いに寄り添っていきたい。
えがおのたねでは、スタッフ全員がいつもそう考えているそうです。
(sakuko)
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